20年以上前からグローバル教育を行う鹿追町!大自然の中で地球規模のコミュニケーション力が身につく「幼小中高一貫教育」の中身とは?!

幼児期から行う英語教育、1人2万円で全生徒がカナダへ短期留学できる高校、ジオパーク指定の大自然を舞台に学べる環境学習、幼小中高一貫教育で手厚い学習環境と進路指導…子どもがいたら思わず心惹かれるキーワードばかりですが、なんとこれらがすべて実現できる町が十勝にあるんです!北海道で最も歴史ある山村留学の先進地としても知られる鹿追(しかおい)町。
“地元愛を持ちつつ国際社会を生き抜く力を身につけてほしい”そんな願いで結束した人口およそ6000人の町が、全力で子どもを育てる教育環境の魅力に迫ります。

鹿追町の幼小中高一貫教育のポイント

2020年には英語を小学校の正式教科とする学習指導要領案が出されるなど、国内の教育現場では、国際的、地球的視野を持って世界の人々と交流できるグローバルな人材育成が求められていますが、十勝でこれにいち早く取り組んでいるのが鹿追町です。
その柱は「幼小中高一貫教育」。いったいどんな教育が行われているのか?詳しいお話を、鹿追町教育委員会学校教育課の大前課長と学校教育指導室長の山本さんに伺いました。

外国人との交流

タブレットPCを使用した授業

鹿追町が行っている幼小中高一貫教育のポイントは…

■コミュニケーション重視の英語教育を13年間、カナダ姉妹都市への短期留学で実践
■地元の自然を知ることから始め、地球環境保全までを学ぶ環境学習
■6-3-3制+1-4-4-4制で学びの連続性と人間関係をつくる
■タブレットPCを全校配備するなどICTを活用した授業を積極的に実施

一貫教育で学ぶのは大きく二つ、英語教育である「地球コミュニケーション」と環境教育である「新地球学」。目標は「高校3年生になった時、カナダの人たちと同じ地球市民として環境問題を英語で討論できるようになる」こと。

「地球コミュニケーション」によって異文化理解と国際交流ができる力をつけると同時に、「新地球学」を通して自国の文化や自分の住む地域について興味関心を持ち、理解し、さらに地球規模での環境問題を世界の人々とともに考え行動できる力をつける。英語教育と環境教育とを連動させて、グローバル社会に対応する力を身につけさせるのが、鹿追流の幼小中高一貫教育です。

外国人との交流授業

小学生と中学生との交流授業

この一貫教育を効果的に進めるため、通常の学年の区切りである6—3—3制に「1—4—4—4制」を導入しています。これは、「1:幼稚園の5歳児」「4:小学1〜4年生」「4:小学5〜中学2年生」「4:中学3〜高校3年生」を区切りとし、児童生徒が上級学校に出向いて一緒に授業を受けたり教員が相互に乗り入れるなど、交流を持つことで、学びの連続性や上級学校へのスムーズな移行をめざすもの。いま教育現場では、「小1プロブレム」「小4ビハインド」「中1ギャップ」「高1クライシス」など、学習内容や環境が大きく変わることで学校生活に馴染めない問題が深刻化しており、これを解消する目的もあるそうで、子どもの心理面にも配慮しています。
また、タブレットPCを1人1台使用した授業を実施しており、平成29年までには全校に配備する予定で、ICT教育に関しても全国的に見て進んだ状況にあります。

きっかけは地元高校の存続危機…町民の意思で留学事業スタート

北海道鹿追高等学校

鹿追町がこうした先進的な教育を実施している背景には、地元高校の存続危機がありました。
1989(平成元)年、町に1校ある高校「北海道鹿追高等学校」で入学者数が減少してきていることを理由に、もともと1学年2学級のところ1学級減らす計画が北海道から示されました。

「学級が減らされると、いずれ高校自体が無くなってしまうのではないか?!」

危機感を持った町民たちが立ち上がり、この町に1校しかない鹿追高校の存続に向けて主体的に活動を始めたのです。1990(平成2)年に地元有志が「鹿追高校協力会」を作り、町民たちが何度も話し合い、十勝教育局へ高校存続の要望書を提出するなどの活動を続ける中で、鹿追町も支援を開始。高校存続のためには「町として特色ある教育、魅力ある高校作りが必要だ」という思いから、まず、町主催で鹿追高校1年生全員を国際姉妹都市であるカナダのストニィプレイン町に短期留学させる「カナダ短期留学事業」を1996(平成8)年に開始。以来、一度も欠かさず毎年短期留学を続けています。

さらに、高校と義務教育とを繋げた教育の流れを作るため、小中高一貫教育を開始。2003(平成15)年に町内すべての小中学校・高校が文部科学省の「研究開発校」に指定されました。
2015(平成27)年からは5歳児も含めた「幼小中高一貫教育」となり、認定こども園・地域保育所も対象となっています。

研究開発校の利点は大きく2つ。まずカリキュラムや授業時間数の自由度が増すこと。学校側で教材を作ることができ、通常の教育課程の授業にプラスして年35時間が確保できるため、しっかり取り組めます。さらに、必要な専門知識を持った教師が派遣される補助があるため、新しい教育に力を注ぐことが可能に。鹿追町はこの研究開発校として、なんと全国で唯一、5期15年という異例の長期で指定を受けています。それだけ国からの期待も大きい“教育的挑戦”を行っていると言えます。

こうして鹿追町は、高校の学級数を減らすことなく存続させながら、町全体で特色ある教育を打ち出すことに成功しているのです。

*研究開発校:文部科学省から指定を受けて、特色ある新しい教育的取り組みを試験的に行い研究する学校のこと。各学校や地域の創意工夫を生かすため、研究開発課題は学校側が決めて文科省に申請する。学習指導要領等の現行の基準によらない教育課程の編成・実施を認め、その実践を通して新しい教育課程や指導方法を開発していこうというねらいがある。

13年をかけて強化していく「地球コミュニケーション」

「地球コミュニケーション」は、他国の文化を理解して尊重し、自国や地域の文化を自分の言葉で紹介できるような「英語でコミュニケーション」できる能力を身につけさせることが主目的の授業です。幼稚園の5歳児では英語を使った遊びを中心として年間10時間。小学1年〜4年生では体験を重視した学び、小学5年〜中学2年生では交流して取り組む学習、中学3年〜高校3年生では学んだことを生かすための学習を中心に、小中学校は年間35時間、高校は70時間をかけて行います。

では具体的にどんな授業をしているのか?今回、小学1年生のクラスを見学させていただきました!

カナダ人ALT(Assistant Language Teacher)による英語での授業

部屋に入っていくと、英語で数を数える歌に合わせて子どもたちが踊っています。みんなが「ワン、ツー、スリー…」と歌いながらとても楽しそう。教師は5名。カナダの姉妹都市から派遣されているALT(Assistant Language Teacher)と日本人英語教師のJTE(Japanese Teacher of English)の2人が専任、2クラス合同なので担任2名と特別支援の担当教師の計5名がついて、きめ細かく子どもたちに目を配っています。驚いたのは、授業の説明や児童への呼びかけをすべて英語で行っていること。大事な指示は日本語でも伝えますが、先生たち全員ができる限り英語で話すようにしています。「円を作って」「聞こえますか?」「よくできました!」などなど、すべて英語。なんと子どもたちも英語の指示を理解して従っています。週1回、英語に集中的に触れる時間を持つことで自然と英語を理解していることがよくわかります。

JTE(Japanese Teacher of English)も英語で説明

今日はまずALTの先生が冬休みをどう過ごしたか、写真を見せながら英語で説明。子どもが日本語で質問しても、先生は英語で答えます。そして、海の生物を英語で覚えた後、かるた遊びでそれらの単語を復習。小学校低学年ということで、遊びを通して楽しく体全体で英語に触れられる授業が行われていました。最後も英語の歌を踊りながら歌って終了。取材者に「グッバイ!」と手を振りながら去っていく子どもたちを見て、これから英語力がどんどん身についていくだろうなと強く感じました。

そのほか年間カリキュラムで特に印象的なのは、英語の正しい発音と綴りのルールである「フォニックス」の学習を小学校の6年間をかけて重点的に行うこと。外国語は、単語や文章が頭でわかっていても正しい発音ができていなければネイティブスピーカーに伝わらないため、初期の段階で正しい発音を身につけられることは、非常に重要です。英検資格保有状況の調査分析では、鹿追町の生徒は、とくにリスニングの得点が高いという結果が出ており、英語の正しい発音が確かに身についていることが伺えます。

中学校ではスピーチを徹底して学習。これにより「英語で伝える力」がぐんと伸びていきます。

幼稚園から積み上げてきた英語力を試す場…カナダ短期留学

「地球コミュニケーション」の最大の特徴は、学習の集大成として行う、鹿追高校1年次におけるカナダ姉妹都市への短期留学。幼稚園から英語でコミュニケーションできるようになるための学習を一歩一歩積み上げてきた成果を試す大きなチャンスです。約2週間の留学では、ホームステイ、地元高校への体験入学、日本文化の紹介などを通して英語を徹底的に実践します。当初は、英語での会話がなかなかできない生徒がほとんどだったそうですが、最近では自ら話そうと考え、一生懸命にコミュニケーションを取ろうとする生徒が毎年増えていき、留学先でも評価が高まっているそう。今年度留学を体験した生徒も「英語を話すことへの抵抗がなくなった」「ネイティブスピーカーとの会話に自信が持てるようになった」などと話していて、学習の成果が明らかに見えます。

ちなみに留学費用はなんと生徒一人2万円のみ!(パスポート発行手数料など)。費用のほとんどを町が負担しています。毎年欠かさず予算を割いて留学費用を確保しているという点からも、町と町民が教育に対してどれだけ強い熱意を持っているかがよくわかります。

“Think Globally, Act Locally”を地で行く「新地球学」

“Think Globally, Act Locally”とは、“地球規模で考え、地元で行動する”ということ。これをそのまま体現しているのが「新地球学」です。地元の素晴らしい自然を舞台にした環境学習を通して地域愛を醸成し、さらに地球市民としての環境リテラシーを身につけることで世界の環境問題の解決を図ろうとする意識を育んでいきます。

まず学ぶのは、地元の環境。鹿追町にはジオパークや大雪山国立公園といった豊かな自然環境があり、また国内最大級のバイオガスプラントもあります。これらを最大限に利用し、北海道で最も標高の高い然別湖でのカヌー体験や“生きた化石”と言われるナキウサギなど生物植物を観察する野外学習、水質調査、外来生物(ウチダザリガニ)を駆除して食べてみる、バイオマスエネルギー等の新エネルギー活用法を考える、など、全学年が体験を通して学んでいきます。学年が上がるごとに、地域から日本、世界の環境問題へと視野を広げ、“地球市民として持続可能な社会づくりをどう作るのか?”を課題に学びを深めていきます。

とくに中学3年からはプレゼンテーションに授業数を割き、環境問題について広く世界に発信し話し合える力を身につけます。高校1年での短期留学を経て、高校3年生では集大成として、カナダからの訪問団を迎え、環境問題をともに考えるプレゼンテーションを英語で行います。これが一貫教育の最終目標。毎年、生徒たちは実際にしっかりと英語でのプレゼンテーションとディスカッションができているそうで、英語と環境学習の両輪で進める一貫教育の成果が、子どもたちも学校側もここで実感できるそうです。

気になる“一貫教育の効果”は?

こうした鹿追町の一貫教育による効果を示す、あるデータがあります。

2016(平成28)年4月時点の「英語検定資格取得状況」を見ると、町内の中学3年生の英検資格保有率は90%を超えています。中でも、中学3年生の英検3級以上を持つ生徒の割合は54.4%。全国1位が千葉県の52.1%、全国平均が36.6%なので、鹿追町は全国で高位にあることがわかります。詳しい分析結果によると、すべての受験級においてリスニングと作文での得点が高く、ほぼ全国平均を超えていたことからも、幼小中高一貫教育により英語教育を進めてきた効果は明らかです。

町では、小・中学生の英検受験希望者に対して受験料1回分を独自に補助し、小学校卒業までに英検5級、中学校では全員3級取得を目標にしています。こうしたバックアップ体制も、子どもたちのモチベーションを高めることにつながっていると言えます。

東京からの移住者も満足する教育環境の良さとは?

「幼小中高一貫教育のことは知らずに移住してきたのですが、知った時は“いい町に引越して来ちゃった!”って思いました(笑)」

そう話すのは、小6と小2の二人のお子さんを持つ、重野まきさん。東京から十勝へ移住してきた方です。もともと子育てするなら東京ではなく、ゆったりとした自然豊かなところで、という希望があり、長女の小学校入学のタイミングで鹿追町へ移住しました。

町の教育環境についてどんな風に感じているか、お聞きしてみました。

重野さん:小1から英語があることに驚きました。姉妹都市からカナダ人の先生が来て教えてくれて、高校になるとその姉妹都市へ留学できるという流れがあると、子どもにとって「目標」になりますよね。しかも、英語と地域の自然を学ぶという2本柱がすごい。鹿追のことを英語でディスカッションできるようになるってなかなかできないこと。地元に根付きつつ、広い世界を見ているという教育形態が成り立っているのは、素晴らしいなあと感じます。

重野さんの小6の長女にお話を聞くと、然別湖でのカヌー体験や、中学生との交流授業でお互いに「将来なりたい職業」について英語で発表しあった授業が印象的だったそう。重野さんも、子どもさんの成長を感じる瞬間がいくつもあるようです。

重野さん:自分より鹿追の自然に詳しくなって教えてくれるようになって、私も知りたいと思う情報をたくさん知っていて驚きました。「ただの景色」が知ることによって見え方が変わってくる、それを感じ取れていることがいいなあと思います。「新しい見方」が身についていっているのを感じます。

地方移住を考えるとき、東京と比較して教育環境に不安を感じる方も多いと聞きますが、経験者としてはどう感じているかお聞きしてみると、素敵な答えが返ってきました。

重野さん:東京とはレベルが違うところもあると思いますが、鹿追では“ここにしかない教育”が受けられる。“ここにしかないこと”を学ぶことで、子どもは“自分にしかできないこと”が出来ていくようになるんだと思います。それが個性になる。ここにしかない個性が強みになって、生きていく力になると思っています。この子ならではの個性を持った子になってほしいので、鹿追でそんなふうに育っていくのが楽しみですね。

「子どもたちは学校生活が毎日すっごく楽しそうなんです」と笑う重野さん。鹿追町は子育て支援も充実しているそうで、町での暮らしにとても満足されている様子が印象的でした。

ちなみに鹿追町で行った保護者アンケートでは、「国際理解」と「進路指導」にとくに高い満足度がみられます。また、鹿追町は古くから山村留学を行っていることでも知られていますが、子どもの山村留学をきっかけに親子で鹿追町に移住したというご家族も多いそうで、教育環境の良さが移住につながっていることがわかります。

廃校ゼロ!町が廃れない理由

教育委員会にお聞きしたところ、鹿追町では近年、廃校した学校は1校も無いとのこと。十勝管内の多くの自治体で廃校が相次いでいる中、これはとても貴重なことです。その理由とも言える町の特徴がありました。
それは、自分たちの地区の学校は自分たちが守るという意識がとても強く、“高校が無くなると町が廃れる”という危機感を持って町民たちが積極的に活動していること。いち早く取り組んだ山村留学もそうした意識の高い親御さんたちの力があって続けられてきた背景があるそうです。主体的に動く大人たちやコミュニティの強い結束力があるからこそ、各地区の学校が守られ、町全体の活気にもつながってきました。農業中心の町ですが、年に数人は町に帰ってきて農業に従事する人たちもいるそうで、一度町を出ても、戻ってきたいという人たちが多いとのこと。長年の取り組みによって、学力だけではなく、地元に対する愛情や誇りも育まれていることがわかります。

 

英語と環境を軸にしたコミュニケーション力が身につくと同時に、この町で育ったというアイデンティティが形作られていく。そんな素晴らしい環境を町のすべての教育施設で用意している鹿追町に、子どもたちへの深い愛情を感じました。また、教育に限らず、自分たちの手で町を面白くしたい!と積極的に動き“人生を楽しんでいる大人”が多いことも子どもにとって良いことだと思う、と話していた移住者の方の言葉も印象的でした。
子どもができたら鹿追町へ引っ越したい、そう思わせる魅力がたくさん。気になった方はぜひ鹿追町へお問い合わせを!(取材・文 大熊千砂都)

お問合わせ

・鹿追町教育委員会 学校教育課
北海道河東郡鹿追町東町3丁目2番地
電話:0156−66−2646

・鹿追町の概要や各種支援制度情報はこちらをご覧ください
https://tokacheers.com/support/town/shikaoicho.html

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