【後編】全国でも先進的な「発達支援システム」を構築した芽室町!障害を抱える子供のお母さんも安心できる「誰にでもやさしい町づくり」とは?

北海道・十勝地方にある小さな町「芽室町(めむろちょう)」。“子育てにやさしい町”として内外から評判の高い芽室町では、手厚い子育て支援と共に障害のある子供やその保護者への配慮・支援も充実しています。中でも特徴的なのは、全国でも先進的といえる「発達支援システム」が構築されていることや親亡き後の不安を解消する就労システムを整えたこと。長期的な目線で町が力を注ぐ障害者支援についてお伝えします。

芽室町・障害者支援のポイント

⚫️子供の「本来の力」を引き出す早期支援

⚫️外部専門家の指導を受けてシステムを構築

⚫️ご両親の「親亡き後への不安」を解消

⚫️障害者も「支援を受ける側」から「利益を生む側へ」

人口およそ1.8万人の芽室町が町をあげて取り組んでいる手厚い障害者支援。その背景と理由とは、何処にあるのでしょうか?

マニフェストの柱のひとつ「特別支援」

現・芽室町長の宮西義憲さんは町長選に出馬する際にマニフェストの柱として「子育て支援」と「特別支援」の充実を掲げていました。宮西さんの町長就任後には「子どもの権利に関する条例」が制定され、障害のあるなしに関わらず、誰もが安心して産み育てられる町になるよう、様々な取り組みがスタートしました。その中でも、今回は全国から関心が寄せられている「発達支援システム」と、障害者の本当の自立を目指す「プロジェクトめむろ」について取材しました。

 

<背景>教育現場の認識不足と適切な支援の不在

現・芽室町長の宮西義憲さんが教育長の立場にあった際、教育の現場で授業中に教室内を立ち歩く男の子の話を聞き、お母さんに専門の精神科医を紹介したことがありました。その児童はADHD(注意欠陥多動性障害)の診断を受けましたが、適切な支援の結果、数年後には落ち着きを取り戻して授業やクラス活動に参加できるようになりました。このように、多くの発達障害の子供たちは早めに適切な支援が受けられれば社会に適応できる可能性を秘めています。しかし、当時の教育の現場ではそのような児童への対応に十分な理解がなく「担任の指導力不足」として捉えられて適切な支援が得られない状況にありました。こうした現場での体験をもとに宮西さんは町長に就任後、スピーディに子育て支援全般を拡充、障害をもつ子どもへの特別支援の充実もマニュフェスト通りに実施したのです。

<発達障害とは>
発達障害とは、生まれながらの脳機能障害です。発達の過程で現れる症状によって自閉症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などに分類され、それらをまとめて「発達障害」と呼びます。昔から身体障害や知的障害のある子供たちは「特別支援」という枠での支援がありましたが、発達障害を抱える子供は身体や知能に問題がないことも多く、特別支援の枠組みから外されていました。

全国的にも一歩進んだ発達支援システム

発達支援センター

芽室町の発達支援システムは、全国でも一歩進んだ支援体制となっています。芽室町ではまず、すでに定評のある発達支援システムが整った滋賀県・湖南市の取り組みを参考にするべく、その発達支援システム構築に大きく貢献したある専門家に指導を求めました。その指導を元に、町職員が試行錯誤した結果、次のような支援システムが作られました。

 

・ 早期発見への取り組み

乳幼児健診の時期は自治体で定めることができ、多くの自治体は1歳6ヶ月健診、その次が3歳健診となっています。芽室町では、何らかの発達支援を必要とする児童の早期発見を目指し、幼児期発達において第一の変わり目といわれる1歳半の発達の確認を確実なものとするために、健診の時期を1歳9か月に変更しました。また、3歳健診の時期を3歳6か月に変更することで、すでに集団に入っているお子さんについて、保育所・幼稚園と情報交換することが可能となり、早期対応の体制の充実を図っています。

 

・発達支援センターの機能充実

発達支援センターでは社会性の向上を支援するソーシャルスキルトレーニングなどの他、各種療育支援を実施。保育園や幼稚園、各学校などとも積極的に連携を取り、発達障害の理解を広めながら、子供の成長を支えています。

・「めむたっち」で親の負担を軽減

芽室町子育てサポートファイル「めむたっち」は、子供の記録冊子としての一般的な機能の他、障害を抱える子供の成長と支援内容の記録手段としても使えるようにしています。このファイルを使用することで、子供が保育園、小学校、中学校と成長するたびに、または担当が変わるたびに「何度も子供の障害を説明しなければならない」という親の精神的な負担を和らげることができます。また、親が死んだ後の支援の要望などを記入する紙が同町のホームページからダウンロードでき、自宅で印刷してファイルに組み込むことができます。定期的に行われる検査の結果なども綴りやすいよう透明ポケットもついているなど、気配りに満ちたファイルとなっています。

本当の「自立」を目指す画期的な就労支援

芽室町は「誰もが当たり前に働いて暮らしていける町」を目指して2012年から「プロジェクトめむろ」をスタート。民間の出資企業を全国から募り、障害を持つ方も生活可能な給料を稼ぐことができる就労システムを整えました。その翌年、2013年には「プロジェクトめむろ」の中核となる「九神ファームめむろ(A 型就労施設)」を芽室町内に開所。同施設では2017年現在、知的障害のある方18名と発達障害のある方2名が働いており、全員が毎月約11万の給料を得ています。一般的なA型事業所の平均賃金から比べると約1.7倍の給料となり、十勝では贅沢しなければ生活できる額です。また、2015年には出資企業によって障害者雇用を積極的に行うコミュニティレストラン「ばぁばのお昼ごはん」がオープンし、新たな展開へと走り出しました。

 

・「九神ファームめむろ」とは?

主にじゃがいもの生産・加工を行うA型就労施設です。障害者の方だけでなく、元気な高齢者、健常者がお互いに支えあって仕事に取り組んでいます。

※A 型就労施設とは一般企業の就職の準備として障害のある方と事業所がきちんと雇用契約を結び最低賃金以上の賃金を支払う形の就労。もう一つのB型就労施設は訓練やリハビリが目的。

取材を終えて

今回取材を担当して、とても驚いたのは「外部の意見」「お母さんの声」をスピーディに形にしていく自治体の姿勢です。外部からの意見、というのはなかなか耳が痛いもの。専門家の意見はアドバイス程度に受け取り、実際には実行できない、という自治体も多いのではないでしょうか。今回の取材でも子育て支援課の方が「専門家の方からは厳しいご意見から、本当に厳しいご意見まで…頂きまして」と苦笑いされていたことから、芽室町職員の方々の苦労が相当なものだった事が容易に想像できました。今の素晴らしい支援体制は、職員一人ひとりが「子供の権利」を守ろうと頑張った結果なのだ、と感動を覚えます。

「お母さんの声」というのも多くの自治体では「アンケート結果」として事務的に処理されがちです。しかし、芽室町では町長が自ら聞いた「(障害のある子供について支援を求める度に)他の子供とは違う部分の説明をいつも求められる。その親の気持ちがわかりますか?」という言葉からお母さんの悲しみをキャッチして、そのような事がないように「めむたっち」に情報提供ツール機能をもたせました。また、「仕事の体験をさせてくれませんか?」「わたしが死んだらこの子がどうなるのかと思うと眠れません」という声に対して「プロジェクトめむろ」を立ち上げました。これほどお母さんの声を真剣に話を聞いて、行政として本格的に取り組んでいるのは大変珍しいケースです。

障害者にやさしい地域への移住を検討中だったり、子供の教育や障害福祉に関心の高い方、「発達支援システム」や「プロジェクトめむろ」をもっと知りたい方は、ぜひ芽室町にお問い合わせください!(取材・文 石川伸子)

 

<問い合わせ先>

・芽室町役場 子育て支援課
〒082-8651 北海道河西郡芽室町東2条2丁目14
TEL 0155-62-9733

・「プロジェクトめむろ」問い合わせ先
pjmemuro@gmail.com

※芽室町の子育て支援ほか各種サポート制度の情報はこちらをご覧ください
https://tokacheers.com/support/town/memurocho.html

 

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